白内障が進行すると確実に視力が低下したり、見え方の質が悪化するので、もちろん病気ではあるのですが、治療が進んできているため、その原因についての考察は置き去りにされている感があります。
手術治療や人工水晶体の性能が改良されたことと相まって、疫学に対しての関心が薄くなっているのですが、今一度軽く復習してみようと思います。
白内障の最も大きな原因はもちろん加齢です。
しかしそれ以外に有名な4つの原因があります。
1. 紫外線
2. 放射線
3. ステロイド薬
4. 糖尿病
1.紫外線は、皮膚科的にもシミ しわ 皮膚がん といったすぐ目に付く事象の原因となるため、人類にとっては有害となりうることは、昔から知られていました。
紫外線の強い熱帯~亜熱帯地域 屋外労働者 屋外スポーツ 等屋外活動が長時間に及ぶ場合、白内障に罹患する率は高くなります。
予防としては、紫外線カットの機能のついた、眼鏡やコンタクトレンズ サングラスの使用。
サングラスを含め眼鏡を使用する場合、紫外線カットを重視する場合は、ツルの幅が1cm以上あるものは、レンズと顔の隙間からの紫外線をカットしやすくなるので、良い対策になるとのことです。
帽子もかぶらないよりは有効ですが、サングラスとの併用が望ましい。
2.放射線は、何らかの事故により、大量の被ばくを受けた後に白内障患者さんが増加することは有名な事実です。
それとは別に、職業的に低線量であっても長期間被ばくする 放射線科や整形外科の医療従事者 宇宙飛行士等は、後嚢白内障に罹患しやすい。
放射線防護用の眼鏡の使用が推奨されています。
3.ステロイド薬
薬の形態としては、内服薬 点滴 点眼 塗り薬 吸入 と各種ありますが、全身治療に使われる内服薬 喘息に使用される吸入薬は、白内障の原因になりやすいと言われています。
ステロイド薬は今や治療に欠かせないものだけに、いたずらに恐れる必要はないですが、ステロイド白内障の場合、発症後の進行は早く、かつ場所的に視力の妨げになりやすい中央部に混濁を起こしやすいため、視力低下に気付きやすいといえます。
4.糖尿病
統計的に糖尿病患者さんは、非糖尿病者に比べ5倍白内障になりやすく、その傾向は60歳以下でまた女性の方が、白内障になりやすいとなっています。
コントロールが悪いと、白内障が急速に進行する場合がある。
日常診察時に、糖尿病患者さんに特に白内障が多いとは感じないのですが、統計上はそういう結果が出たということです。
こういう疫学的なことを調べてみて感じたことは、安全な手術を或いはよりよい視機能を獲得するための人工水晶体の開発等、先人たちの努力が報われてきたことは、有難いことで感謝の念が湧いてきます。
一方、白内障を発症しないということは主たる原因が加齢であることを考えると不可能で、予防に注力することは大切ではあるけれど、白内障という病気はある程度受け入れざるを得ないという平凡な結果となりました。