
前回のブログでも参照した、慶応大学眼科学教室の医局から送られてきた昨年の年間報告書には、現在継続中の研究プロジェクトの進捗状況なども、披露されていました。
興味深く読んでいたのですが、その中で、世界中で近視人口が激増していることで、近視の進行を抑制するプロジェクトが関心を持たれています。
大学においても、力を入れている分野です。
そのサマリーのごく一部ですが、ご紹介します。
全て英文もついていて、参照するべき発表論文もついているので、信頼に足るものだと感じました。
何より昨年のまとめですから、ごく最近の話題です。
近視人口の増加についての統計的結果ですが、東京都内の小学校の近視有病率 76.5% 中学校の近視有病率 94.9% ということは既に、2019年にJAMA Ophthamol.に報告済みでしたが、さらにその後2021年度から始まった文科省による全国の近視実態調査結果の報告によっても、高い近視有病率が判明している。
強度近視は、緑内障や網膜剥離 近視性黄斑症などの合併リスクを上昇させることが知られているため、強度近視化を防ぐことが重要です。
そのため、エビデンスに基づく近視進行抑制治療の実施 臨床研究、 また近視の進行や抑制に関連する原因を調べることを目的とするプロジェクトである と書かれていました。
今回はその中でもバイオレットライト(VL)について述べられています。
以前この研究について、ブログで書いたこともあります。
外遊びと近視の関連ですが、このバイオレットライト(VL)というのは、波長360~400nmの可視光線で、現在判明していることは、学童のみならず成人も近視を抑制する可能性があること、そしてVLは屋外には豊富に存在するけれど、室内にはほとんどない。
VLの有効性についてのエビデンスは、すでに論文になっていますが、簡単にいうと1日2時間 屋外活動をすることで、2年間で網膜を栄養する脈絡膜という組織が厚みを増し、近視が進むことで長くなってしまった眼軸(眼球の直径の長さ)が短縮し、近視が改善した報告(世界初の症例報告 2020)
VLを発光する眼鏡を使った安全性や有効性を評価する臨床試験のうち安全性は確認され、現在は有効性を確認する検証治験を実施しているようです。
新しい試みは、とかく失敗や有効性に疑義がはさまれることもあると思いますが、オルソケラトロジーや近視抑制点眼剤のように、未だに自由診療扱いの治療法に踏み切れない子供たちのためにも、外で遊ぶことで近視進行が抑えられる、外で遊べない子供のためには、VL眼鏡が安く提供されるようになるといいなと思います。
国を挙げて近視抑制プロジェクトに関心を寄せて頂き、オルソ治療やこの度発売される、リジュセアミニ点眼剤のような近視抑制点眼剤も、保険診療扱いとなることができたら、もっといいと思います。