糖尿病患者さんは、最低年に1回はお会いする機会があります。
眼底検査を受けておいで、と内科の先生から言われたとしぶしぶ来られる方も未だに多いですが、最近はよく勉強されていて、初診の方でも最初から眼底検査を希望している方もおられます。
ただ初診の方は、狭隅角の場合散瞳すると急性緑内障発作を引き起こす危険性があるので、前眼部を診察しないでいきなり散瞳ということはありません。
今日は眼底検査のお話ではなく、一年ぶりに来院された患者さんがあまりに痩せておられたので、食事療法が行き過ぎることも、サルコペニアやフレイルを引き起こすという心配があることを感じました。
そういうペーパーがないかを探したところ、少し前のものですが、日本病態栄養学会のシンポジウムでの講演がみつかりました。
2019年1/11に、京大病院 疾患栄養治療部 副部長の幣 憲一郎先生という方が、高齢糖尿病患者におけるサルコペニア・フレイル対策の現状と課題 という演題で発表されていました。
以下簡単に要約します。
糖尿病患者の平均寿命もこの10年で男女ともに3.5歳 30年で男性8.3歳 女性10.2歳も伸びているが、糖尿病患者の場合高齢化とともに、合併症問題が深刻化し、その一つがサルコペニア・フレイル。
生活習慣病予防の教育を受けていた患者さんが高齢になったにもかかわらず、そのままの食事療法を続けると、低栄養から体重減少 筋肉量の低下を来し、サルコペニア・フレイルを招きかねない。
筋肉は20台をピークに年齢とともに、骨格筋肉量は低下し、血糖の80%を取り込む骨格筋が減少すると、糖尿病の血糖管理にも悪影響を及ぼす。
下肢筋肉が減少すると、歩行速度も低下する。
咀嚼機能も筋肉量と関連があり、筋肉量が低下すると、よく噛むことが維持できなくなり、認知機能にも影響する。
一般に糖尿病患者さんは、私の印象では、よく食べ、基本的には元気な人が多い印象ですが、やせ形で筋肉量が少ないタイプの人は、以前と同じ食事療法を厳格に守り過ぎて、体重減少が進むことは、あまり好ましくないということが結論かと思います。
高齢者の体重減少は、加齢に伴う自然な変化として見過ごされており、ある段階から低栄養対策を考える必要があると述べられていました。
食事をコントロールし過ぎてフレイルになってしまっては、元も子もないのですから、筋肉量を減らさない為にも、ある程度食べ、良く動くということは、誰にとっても大切なことだと思います。