先日ご家族とともに、白内障手術を希望してご高齢の患者さんが来院されました。初診の方です。
ご高齢とはいえ、単に視力が低下しているというよりは、かなり前から見え方はぼんやりしていたが、この3か月ほど前から見え方がおかしくなって困っているので、白内障手術を希望する とはっきりご自分で述べられました。
白内障だけであれば、年齢にかかわらずこれほどしっかりされていたら、手術はもちろん可能です。
ところが眼底検査をしたところ、加齢黄斑変性症の病変があります。
おそらく3か月ほど前から見えにくくなったと言われていたのは、この発症が原因でしょう。
白内障は相当進んでいるので、漠然とこの頃見えにくいという程度の認識であれば、白内障のための濁りが取れるだけでも、不快感は減少して手術を受けたメリットは享受できると思います。
今までもそういう方は、多くおられました。
ただ、この方のようにはっきりとした病識がある場合、白内障手術を受けてぼやけやかすみが取れたとしても、肝心の見えたい中心部分がゆがんだり、暗黒感があり視力に反映できないということになると、わざわざ手術を受けたとしてもどれほどのメリットがあるのかを説明するのは難しい。
ただ白内障は、命ある限り進行していくわけですから、全体的な視力低下は進行していきます。
黄斑部の病変があることは、ご本人も承知されていますが、視力回復に直結しない手術を受けるという決断はなかなかできないものです。
御家族の方も、頭はしっかりしているのだから、自分で判断するようにと患者さんにきっぱりと言われています。
結局、当分眼底の病変の経過観察を続け、その間に患者さんと相談して決めていこうと、考えています。
何歳になっても手術を受けることはできると考える方も多いようですが、身体能力や認知機能が低下すると、どうしても家族の手を煩わさないといけないことになり、自分の一存では行動できないということになる例は、多くあります。
白内障手術の場合、病院での長期入院も基本的には困難になっています。国の方針です。
そのことをふまえて、計画的に治療時期を決めていくことも大切だと思いました。