白内障手術を受ける場合、他の科の手術とまた眼科の手術の中でも網膜剥離や緑内障手術といった手術と大きく異なる点が一つあります。
それは手術後の自分の見たい距離はどこなのか、メガネをなるべく使いたくないのか 等を相談してある程度自分の手術に自主的に参加することができる点です。
多焦点レンズについては大分認知されてきていますが、メガネをなるべく使いたくないという人の受け皿となるレンズです。
多焦点レンズにも良い点・悪い点がありますが、白内障手術そのものは増加し、多焦点レンズの存在の認知度も高まっているのに、普及率がそこまで高くないのは、患者さんにおいてメリットがデメリットを上回っていないからと、医師側の多焦点レンズの普及への熱意が少ないからという両方に原因があると思います。
今までこのブログでも、多焦点レンズについてひとしきり説明してきましたが、私自身が患者さんに、熱心に多焦点レンズを勧めているかというと、そうでもないという結論になります。
その理由は、患者さんのデメリットの一番は、多焦点レンズを使用した白内障手術が、選定療養というカテゴリーに入ることにより、レンズ代が自腹となり、高コストな手術となってしまうことだ ということを知っているからです。
また多焦点レンズは、全ての人に必要なレンズではない以上、自発的にこのレンズを希望しているという相談がなければ、軽くこういうレンズもあります という程度の説明で終わってしまいます。
時に、全然多焦点レンズを希望していないにもかかわらず、質問攻めにした挙句、白内障手術もまだ考えていない という周りを気にしない患者さんもおられますが、一般的に当院の患者さんは、良識的で控えめな方が多いので、説明に時間を取るのは申し訳ない と気を使って下さっている方が多いように思います。
そうすると自発的に希望された方を対象に、適応・不適応の話に進んでいきます。
この何年かでも、多焦点レンズは日進月歩の感があり、レンズの選択肢も増えました。
特に3焦点レンズや連続焦点眼内レンズを入れることが増えたこの数年の成績は安定しており、実際患者さんの満足度を見ていると、白内障手術を受ける年齢としては若い世代に属する70代ぐらいまでの方には、もう少し積極的に選択してもらってもいいのではないかと思うようになりました。
設定療養を行っている施設は、多焦点レンズのコストについては、院内掲示する決まりとなっていますので、値段はそれを見て頂くといいのですが、自分に向いているかどうか等ご心配があれば、診察時にお伝えください。