最近あまり聞かれなくなりましたが、以前は白内障手術時に入れる人工水晶体の寿命について尋ねられることがありました。
あまり早く入れると、人工レンズが古くなって、入れなおす必要が有るのではないかというお尋ねです。
一般には、白内障というと高齢者の病気と考えられていますが、稀に先天性白内障という幼い子供に起きる白内障があります。
そういった子供たちに行う白内障手術にも、人工水晶体を入れることは保険適応が認められていますので、眼内レンズの寿命は人間の寿命より長いと考えられています。
ですから素材の劣化を心配して、白内障手術をためらう必要はありません。
時に既に白内障手術後の方が、多焦点レンズへの入れ替えを希望されて来院されることもありますが、眼鏡をやめたいからという理由での入れ替えはお勧めしません。
眼内レンズの入れ替えというのは、度数ずれ レンズの脱臼 落下 などめったにない特殊な状況に対して行われる手術だからです。
近年の人工水晶体は、柔らかい素材でできているため、折りたたまった状態でわずか2~3mmの小さい傷口から眼内に挿入しますが、本来の眼内レンズの直径は6㎜位あります。
ですからその状態のレンズを眼外に出すのは、挿入以上に目にダメージとなるからです。
人工水晶体の素材としての寿命は、人間の寿命より長いというのが結論です。