【流涙症(なみだ目)について】
涙が吸収されずにあふれ出しますので、常に涙っぽい感じや、泣いてもいないのに涙があふれてきたりします。涙が停滞することにより目やにが増えたり、涙っぽいことより、見にくくなる場合があります。その原因の一つに涙道閉塞症があります。
涙道閉塞症がひどい場合は、感染を起こし、目がしらの所が赤く腫れてしまうこともあります(涙嚢炎)。
【涙道閉塞症とは】
涙は目尻の上にある涙腺(るいせん)から分泌され、眼表面をうるおした後に目頭にある涙点(るいてん)から涙小管(るいしょうかん)、涙嚢(るいのう)、鼻涙管(びるいかん)を経て鼻粘膜に吸収されます。
この涙の排出する道(涙道)がつまることを涙道閉塞症といいます。原因としては涙道内に老廃物が蓄積してきてしだいにふさがってくることが多いようです。最近では習慣的にプールに入る方に多いことも分かってきました。鼻涙管の内腔が狭くなっている鼻涙管狭窄症(びるいかんきょうさくしょう)という状態もあります。また、加齢によって涙の排出する道は通っていても、機能が悪くなることにより涙がでる導涙機能不全という病気もあります。
●診断
涙道閉塞症がなくても、睫毛乱生、眼瞼内反などの逆まつげ、目の乾燥であるドライアイ、白目の粘膜(結膜)がゆるむ結膜弛緩症が原因でなみだ目になる場合があります。涙道閉塞の有無は涙点から生理食塩水を注入して鼻まで水が通るかどうか確認します(通水試験)。
これらの状態は眼科の一般診察で簡単に診断できます。
●治療
基本的には目薬や飲み薬では治らず、閉塞部位を開通させてシリコンチューブなどを留置する涙道チューブ挿入術を行います。日帰り手術で行います。
●涙道チューブ挿入術の方法
目頭と涙道内へ局所麻酔します。閉塞部位をブジーという細い金属の棒を涙道内に挿入して先端で突いて開通させます。うまく再開通できたら再び閉塞するのを防ぐ目的で涙道内に細いチューブを挿入します。手術時間は、閉塞部位や閉塞の程度によって異なりますが、10~30分程度です。
●手術後
局所麻酔の影響で顔がしびれたような感覚があります。また物が二重に見えてしまうこともありますが、3~4時間後に麻酔の効果が切れると改善しますので問題ありません。1~2日間は涙や鼻水に血液が混ざることもありますが問題ありません。うまくチューブが挿入できた場合、しばらく点眼治療をしながら外来通院で涙道洗浄を行います。涙目の症状は次第に改善してきます。ほとんどの場合、チューブ留置による違和感もありませんが、まれに違和感が出る方もいます。
留置したチューブは2~3ヶ月後に抜去します。チューブの抜去も外来で簡単にできますので、安心してください。
チューブを留置した状態
【涙道手術の注意点】
・チューブが入らない場合があります。 閉塞部位が涙小管である場合はふにゃふにゃしているためにとても開通させにくい部位で、無理に力を入れると誤った方向に穴をあけてしまいます(仮道形成)。また、閉塞の程度がひどい場合は金属の細い棒(ブジー)にて通過できない場合があります。その場合、再手術もしくは他の治療を検討します。状況によって対応が異なりますので、担当医とご相談ください。
・チューブを抜去したあと、再度閉塞する場合があります。患者様の病状や希望を考慮して、再手術もしくは他の治療を検討するか、担当医とご相談ください。
・その他の治療とは
涙管チューブ挿入術は当院にて日帰り手術で行っていますが、その他の涙道治療は入院での治療を要します。閉塞が高度で開通できなかった場合や、一度は開通してもチューブを取るとすぐ再閉塞してしまう場合、涙嚢炎が原因で目頭が腫れを繰り返す場合は涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ:DCR)を行います。この手術は安全性も成功率も高い手術ですが、入院が必要です。涙嚢鼻腔吻合術が必要な場合は、専門的行っている医療機関にご紹介させていただきますので、担当医とご相談ください。