緑内障の症状で一番気になるのは、視力というより視野欠損の進行具合ですが、患者さん自身はかなり進むまで自覚しにくいことが多いです。
視野が欠ける病気は緑内障ばかりではなく、網膜剥離や脳疾患でも起きます。
これらの病気は急速に起きることから気付きやすいわけですが、緑内障は超慢性疾患のために患者さんはかなり進むまで、自覚できないことが多いです。
その理由について、緑内障専門医の近畿大学の松本長太先生のペーパーを読みましたので、共有しようと思います。
初期の軽い緑内障で視野欠損が自覚できないのは、当然ですが、視野検査で相当進行して殆ど真っ黒になっている結果を前にして、なぜ気付けなかったのか不思議に思うこともあります。
松本先生によると、視野検査結果が真っ黒に表示されている場合も、実際には黒く見えているわけではなく視野の欠損している部分に見えるべき物体が入っていても一瞬物が消えたとしか感じず、実際の生活ではほとんどの場合支障がないこと。
患者さんからも、子供とキャッチボールをしていて一瞬ボールが消えることがあるというお話を聞いたことがあります。
さらに検査は片眼ずつ行いますが、実際の生活では両眼で見ているため、左右の視野を重ねると、かなり見えない部分があっても補うことができること。
視覚情報は、注視している部分が一番情報量が多いですが、緑内障の場合中心視野はかなり末期まで温存されることが、多いです。
そのため注視している部分つまり中心視野が保たれている間は、周辺部の欠けは顔を動かして、中心視野の中にとらえることができれば、認識することができる。
ですからかなり視野が狭くなっていても、免許更新ができる場合もあるわけです。
眼科で行う視野検査は、日常生活ではあまりないかなり暗い指標が見えるかどうかの測定をしているが、日常生活ではほとんどの場合もっと見やすいものを見ることが多いため、視野検査の結果と日常生活での自覚症状に乖離がある。
その他に、周辺部の視野については、中枢レベルで補填できること 中心部分を集中してみている場合は、周辺の視野欠損は認識されにくいといったことが書かれていました。
もし本当に苦労なく生活できるのであれば、そうであってほしいと思う反面、自分で自覚できる視野の欠けが出る前に、治療が始められることを願います。