高血圧は生活習慣病の中では最も多く、手術前の服薬履歴をお聞きすると降圧剤を飲んている方はとても多いです。
眼科においても、眼底出血の引き金になったり、高血圧網膜症といって網膜自体に出血や白斑がでてきたりむくみがでてきて、高血圧が網膜を傷めることは確かです。
ただ一昔前と異なり内服治療が普及したせいか、昔ほど純粋な高血圧網膜症を見かける機会は多くありません。
また眼底出血は、高血圧以外の原因でも発症します。
東京都健康長寿医療センター循環器内科部長の石川先生によりますと、米国における大規模調査(降圧治療が心臓血管系の病気の発症を防ぎ、それにより起こる寝たきり状態や要介護状態を防ぐことができるかを解明する目的)の結果は、75歳以上の後期高齢者であっても積極的降圧治療は、心血管死亡が減少した一方、80歳以上の高齢者では、降圧剤内服で血圧が低かった人の方が死亡率が高かったという、相矛盾する結果が出たそうです。
先生の分析によると、これは因果関係が逆転している つまり、高齢になり栄養状態が悪化していたり、認知機能が低下したり、いわゆるサルコペニアといった状態になることにより、血圧が徐々に低下していると考えた方が良い。
その根拠として、英国の家庭医が4年間に集積した80歳以上の14万人のデータによると、亡くなる2年前ぐらいから血圧が急激に低下することが報告されていることを、挙げています。
ですから、こういう血圧が下がり始める時期から、積極的な降圧治療から減薬を考えるべきで、それによりむしろ要介護状態から脱皮して認知機能の改善も期待できるとのことです。
眼科的にも、高齢者の緑内障の進行危険因子の一つとして、低血圧がありその原因は、視神経への血液循環の低下によるということは、知られています。
身体の働きは、全身で見ていかないといけないですし、私もその状態にならないとわからないですが、自分の身体の調子は、自分自身で聞き取らないといけないのだなと思いました。