数が月ぶりに来院された患者さんの白内障の進行が意外に早く、視力が低下しているので、もしや他の疾患が発症したかと心配することがあります。
ひとしきり、検査をしても特に他の病気は見つからず、「良かったです。病気が無くて」と思わず言ってしまうのですが、よく考えれば、白内障という立派な病気が進行しているので、良いわけではありません。
ただ、白内障は治療しやすい病気という安心感から、そういう表現になるわけですが、患者さんは相変わらず良く見えていると、言われることもあります。
年単位で進んでいる場合はそういうこともあるでしょうが、月単位の場合は、必ず自覚症状があると思い、よく様子を聞いてみると、ぼやけて見えるのは年を取れば当たり前だから気にならないけれど、まぶしくなったのは堪えると言われます。
それはまさに白内障の進行のせいですから、まぶしいのは解決できることをお話しすると、手術を受けることを即断されました。
そして、手術後「まぶしさがとれてよかった。もっと早く受けるように勧めてくれると尚良かった。」
と言われてしまいましたが、私たち眼科医はつい常套句として、視力関連のことをお話しすることが多いのですが、昔と違って視力がとことん下がってから手術を受けるという方は、減ってきているのですから、視力のことばかりではなく、見える質、見え心地を尋ねる必要もあるのだということを教わりました。
当たり前ですが、人それぞれ性格は違い、あけっぴろげに自己開示する方もいれば、お付き合いを重ねるにつれ、少しずつ知らせてくれる方もいます。
眼科は、どちらかというとデータを大切にするというと格好いいですが、わりと見たものを信じる即物的な科ですが、やはり診察室の中では、生身の人間同士、心の交流が大切なのは変わらない事実だと思います。
本当は、ご本人も見えにくくなっているけれど手術が恐ろしくて、受けたくないのだろうと忖度しているのですが、実はそうでもないのかもしれないですね。