さて今回は緑内障の手術について少し具体的にお話をしようと思います。前回書きました通り、緑内障の手術は眼圧を下げるために行いますが、そのやり方(術式)には色々あります。
そもそも眼圧は「房水」という目を栄養する水の流れが悪くなることによって数値が上がるため、この房水の流れを手術で改善させることによって眼圧を低下させるというのが、どの手術でも共通しています。
そして房水は線維柱帯という角膜と虹彩の隙間から流れてゆくのですが、まず術式の一つに「線維柱帯切除術」があります。
この手術は線維柱帯の一部を切除すなわち取り除いてしまって、房水を眼球の外側にうまく流れるようなバイパスを作る手術です。この手術では眼圧を強力に下げることが可能となりますが、逆に下がりすぎることで不具合が起こったり、感染のリスクがやや高めで、いわゆる手術の合併症が起こりやすい手術と言えます。この手術はハイリスクハイリターンであるため、難治性の緑内障や重度の緑内障が適応になります。最近ではインプラントを用いてこの手術を行う術式も登場してきましたが、どちらかと言えば海外の方が進んでおり、国内では近年ようやく手術が普及してきたところです。
また何らかの原因によって線維柱帯の部分に癒着が起こって眼圧が上がってしまうタイプの緑内障では、その癒着を解除させる「隅角癒着解離術」という術式もあります。これは単純に癒着を手術ではずす手術なので合併症は少ないですが、癒着の程度によっては効果が出にくいこともあります。
そしてもう一つ「線維柱帯切開術」という術式があります。文字通り線維柱帯を切開することによって房水を流れやすくする手術ですが、近年はより小さい傷口からごく短時間でできる手術方法が開発され、当院でも本手術を取り入れています。この手術はどちらかと言うとローリスクローリターンな手術ですので手術が短時間かつ合併症が少ない、というの点が特徴的な手術です。
緑内障の手術 は白内障手術と比べると経過は個人差がとても大きい手術であり、今後、よりローリスクでハイリターンな手術の開発が待たれます。