この題名は、日本眼科学会の生涯教育講座の総説の原稿そのままですが、今世界中での近視しかも高度近視の人口激増を受けて、危機意識が共有されていますが、そのことについて、証拠に基づいた検証をしてみようといった内容でした。
近視があっても、眼鏡やコンタクトレンズ 等によって、日常生活に差し障りがなければ問題はないのです。
ただ成長期に、近視が進行していき、高度近視となり、眼軸長が長くなることが、網膜や脈絡膜に病変を起こさせ、ひいては黄斑変性症、網膜剥離、緑内障など失明に至る病気を誘発する可能性があることが心配されています。
中国などでは、2018年 習近平国家主席が国家的政策として、近視人口削減計画を開始しましたし、台湾やシンガポールでも何らかのプログラムが実行されていますが、日本ではまだ国家を挙げての具体的な取り組みは、始まっていません。
ただしプログラムを進めるうえで、科学的な根拠や証拠に基づく医療が社会的に浸透してきている以上、はっきりとしたエビデンスが示される必要があります。
製薬 眼鏡 オルソを含めたコンタクトレンズ関連企業が近視抑制治療が話題になり現実味を帯びるにつけ、医療ビジネスとして本格的に学会にも参画し始め、2019年9月に 東京で国際近視学会が開かれ盛会ではありましたが、未だはっきり明言できる方針はありません。
眼科医として注目するべきなのは、
1.近視の屈折値だけではなく、眼軸長が抑制できているのか。
2.その抑制効果は、一過性ではなく、長年持続可能なのか。
3.抑制効果が、特定の年齢 民族 近視強度に限定されたものではないのか。
4.治療中止後にリバウンドはないのか。
さらに小児に対する予防治療としては、
①重篤な副作用がないこと
②経済的であること
③治療が煩雑でないこと
を必要条件とするべきとこのレヴューの著者である川崎医科大学眼科 の 長谷部 聡先生は書かれています。
累進屈折力眼鏡(いわゆる遠近両用眼鏡)や特殊な非球面レンズを使った眼鏡 多焦点ソフトコンタクトレンズ オルソケラトロジー 低濃度アトロピン点眼 屋外活動(バイオレットライト)
色々取り組みはありますが、今のところ治療として確立したものはありません。
確立されたものとなったら、治療として保険適応されることが期待できます。
それまでは、今のところ安全に無理なくできる手段は、以前書きました外遊びの時間を増やすこと こまめに眼鏡の度数を適切な度に合わせ、低矯正のまま放置しないことだと思います。
平凡な結果ですが、人間が作り出した電気やそれにまつわる目を使う状況は、生物としては不自然なことなので、ある程度以上の限界を超えた酷使は近視になりやすい素養のある人には負担が大きいということでしょう。
目を休めていたら近視にならないというわけでもないことも考慮に入れて、目を使って有意義な人生を送ることと視力が低下する可能性が高くなることはトレードオフの関係なのは受け入れざるを得ないという気がします。