老視矯正眼内レンズという呼び方は、聞きなれないと思いますが、今まで多焦点レンズと呼んでいたもののことと殆ど同じです。
先日多焦点レンズの知見について、日本の眼科医で知らない人はいないと思われる、ビッセン宮島先生のレクチャーを聞いてきました。
医療費の高騰 生命保険の先進医療特約を使った多焦点レンズ挿入術の増加に伴って保険会社の経営を圧迫している 等のことにより、多焦点レンズを使った白内障手術を先進医療に含めるかどうかといったことが医療行政の中で、今論議をよんでいるとのことです。
純粋眼科的にも、多焦点レンズという呼び方は、世界的に見てもすでに時代遅れで、今後は老視矯正眼内レンズという呼び名を推進していくようです。
白内障術後は、若い人や子供であっても調節力は失われるので老視という表現はちょっとどうかと思わなくはないのですが、近くも遠くも自分の目でそこそこ見える状態にできるレンズのことと考えていいと思います。
考えてみればそういった見え方の好みは、人それぞれで、欲張らずにどこかをはっきり見えた方が嬉しい人も多いですし、メガネをかけることが気に入っているので折角よく見えるようになったというのに、ほとんど素通しのレンズでメガネをつけている人もいます。
それなら単焦点でもいいのにと思うのですが、基本的には大体見えていることは大切だから、多焦点レンズを入れるという人もいます。
3焦点レンズ 2焦点レンズ 焦点深度拡張型レンズといった人工レンズの種類も多くなり複雑化してきていますが、ビッセン宮島先生によりますと、焦点深度拡張型レンズは、老眼対策の加入度は低いですが、総合的に見てコントラスト感度が落ちにくく、多焦点レンズ特有のにじんだ見え方も少ないので、なくてはならないレンズといった位置づけでした。
現在当院では、焦点深度拡張型レンズを選択していますが、今後の趨勢を見極めて、また変更や追加をしていこうと考えています。
今後は、多焦点レンズの健康保険における位置づけがどうなるのかは、政府と行政担当の医師会の偉い人の協議で決まるのでしょうが、結果がどうあれ、自分はどう見えたいのか、それに対してどれぐらいの経済的負担を許容できるのかといった好みは、持っていた方が説明する時に方向性を見つけやすいと思います。
もはや、欧米をはじめ日本でも白内障手術は、視力が下がりきってから受ける発展途上国型の時代は終わり、残る人生をよりよい視力で生きるための手術となってきたようです。