さて今回は網膜剥離の手術後の経過や注意点などについての説明になります。網膜剥離の手術には「網膜復位術」と「硝子体手術」の大きく2通りがあることは以前のブログで説明しましたが、術式によって手術後の経過や注意点も若干異なります。
まず網膜復位術では一般的に眼内にガスを注入しないことが多いため、手術後には特別な体位制限は基本ありませんし、早ければ手術翌日からある程度視力が回復していることが多いです。しかしながら、硝子体手術に比べますと切開したり縫合したりが多いので、手術後には異物感が出やすい傾向があります。また目を動かした時にシリコンスポンジが目の周りの筋肉と干渉することで、手術後しばらくは目を動かすと多少の痛みを感じることもあります。
また手術後の見え方についてはもともとの網膜剥離の程度にもよるのですが、手術で網膜が無事にくっついても、すぐに視力が完全に回復する訳ではありません。具体的には、網膜剥離が黄斑部(網膜の中心部分)に及んでいる場合には視力の回復はゆっくりとしていて、ものの歪み(黄斑部まで剥がれてしまうと、ものが歪んで見えることが多い)は多少残ってしまうことが多いと言えます。このような場合、長い人だと手術から半年以上かけて視力や歪みが良くなってゆくこともあります。それとしばしば問題になるのが網膜剥離の再発です。もし再発してしまいますと、通常は再手術しなければなりませんので、手術する立場からすれば再手術しなくてもいいように丁寧な手術を心掛ける必要があります。一般的には一回の手術で網膜剥離が治るのは8割〜9割と言われています。
次に硝子体手術についてです。硝子体手術ではシリコンオイルを注入するような特殊な場合を除き、通常はガスを目の中に注入します。このガスによる浮力や張力によって網膜を押さえることによって網膜をくっつける訳ですが、そのためには実は体位制限してもらうことが必要です。具体的にはうつ伏せや、あるいは横向きで寝てもらったりすることになります。注入するガスの種類にもよりますが、1〜2週間くらいはこのような体位制限をある程度守ってもらう必要があります。ただごく最近は昔ほど厳しい体位制限をしなくてもいいのではないかという意見もあるので、施設によって多少違いはあるようです。それにガスは徐々になくなってはいきますが、ガスがあるとかなり見えにくいので、もちろん網膜の状態にもよりますが、見えてくるのには多少時間がかかってしまいます。
また、最近の硝子体手術では傷口がごく小さいため、手術後の異物感や痛みなどについては網膜復位術よりも少ないことが多いと言えるでしょう。
以上、網膜剥離についてのお話でした。このブログを読んで網膜剥離について理解いただければ嬉しく思います。