さて前回は「眼瞼ミオキニア」についての話でしたが、本日は「眼瞼けいれん」という病気についてお話します。「眼瞼けいれん」という名前からしますと、「まぶたがピクピク痙攣する」ということをどうしても想像してしまうと思いますが、実際に痙攣を自覚するケースは非常に少ない病気です。
「眼瞼けいれん」は一言で言えば、正常な瞬目(まばたき)ができなくなる病気です。まばたきというのは自分で意識的にすることもできますが、通常、涙が乾いてくると反射的に行ったり、何か物が飛んできたり危険を感じた時などに行ったり、無意識的に適度な回数まばたきをしているのが普通です。ところがこの眼瞼けいれんという病気になると、自分では目を閉じたくないのに勝手に目がつぶってしまったり、重症になると指でまぶたを上げないと目が開けられない程になることがあります。
まずその原因、症状については以下の通りです。
1)原因
詳しい原因は実は分かっておりませんが、まばたきに関連する脳の中枢の神経障害によって起こるという説が有力です。また精神安定剤、睡眠導入剤、抗精神病薬などの服用をきっかけに起こることもあったり、抑うつ症状によって悪化する傾向などがありますが、ほとんどの場合はそういったこともなく発症します。
また目の周りだけではなく、ほっぺたや口の周りなども無意識的に収縮してしまう場合があり、これは片側顔面けいれんと呼ばれます。(これは両側に起こることは非常に稀だと言われています。)
2)症状
症状は非常に多彩です。まず初期の軽い状態であれば、「まばたきが多い」、「まぶしい(特に屋内よりも屋外に出ると)」などがあります。もう少し進行すると、「目を開けているのがつらい」「目を閉じている方が楽」などといった症状もよくあります。他には「目が何かうっとおしい」「目の違和感」「目が乾燥する感じがする」などの症状です。重症になると「目が開けられない」こともあります。
こういった症状でよく間違えられやすい病気に「ドライアイ」があります。ドライアイは涙の量や質が低下することにより様々な症状を引き起こしますが、「眼瞼けいれん」の症状にも共通点が多くあって、「目が乾燥する」「目の違和感(ゴロゴロする)」「目を開けているのがつらい」「まぶしい」などは、どちらの病気でも起こり得る症状だと言えます。
「眼瞼けいれん」はこのように「ドライアイ」と間違って診断されやすく、ドライアイ治療の目薬を処方されて全く治らなかったり、また症状が多彩すぎてなかなか確定診断が難しいケースもあります。ですが眼瞼けいれんの患者さんは自覚症状が非常に強いことも多い病気であり、きちんと診断して治療することが大切だと常々感じています。