タイトルの角膜表面の荒れという表現は、眼科医としては非医学的ではありますが、眼科用語ではOSD(眼表面疾患)と呼ばれるもののことです。
ただそのように書きますと、緑内障自体よりさらに悪性の病気のように勘違いが起き、点眼をやめてしまうという事態になるといけないので、このような表現をしました。
以下OSDと記します。
緑内障治療の多くは、点眼薬治療単独または手術と併用で、点眼薬を使用していることが多いのですが、その49~59%にOSDが認められる と新しい眼科 という眼科雑誌に三重野洋喜先(京都府立医大)が投稿されています。
そのペーパーより引用します。
症状としては、点眼開始から3か月以内に、刺激感 痒み 流涙 等を引き起こし、緑内障点眼薬は長期にわたり使用するため、薬剤性の結膜炎のうち、最も多いのが緑内障点眼薬である。
またまだ点眼薬治療薬を開始していない緑内障の患者さんは、高眼圧の患者さんに比べ22% 正常の人に比べ27%涙液回転率が低いという報告がある。
つまり、緑内障患者さんは、そもそもOSDを引き起こしやすい可能性がある。
緑内障点眼薬は、異なった作用機序の多くの種類の点眼薬がありますが、全ての点眼薬がOSDを引き起こす可能性があることが知られています。
またわずかな量とは言え、防腐剤が薬剤の安定性と安全性のために添加されていることが多いですが、それが、眼表面を傷める原因になることは、緑内障薬に限らず全ての点眼薬にいえることです。
またその添加物は、点眼薬の量に比例して副作用が増加することは知られています。
まとめますと、緑内障患者さんにとって、緑内障点眼薬は必需品でありながら、薬自体の成分 添加されている防腐剤 緑内障患者さん自体の涙液回転率の低下 多種類の点眼 といったことで、眼表面が傷みやすい状態になっている。
OSDによる炎症が起きること自体が、また眼圧のコントロールに影響を与えることがわかっているため、OSDを減らすための提言をされています。
1.合剤を使い、なるべく点眼回数を減らす。
2.OSDの管理が困難な場合は、選択的レーザー治療(SLT)も考慮に入れる。
ただしSLT 治療に変更して、点眼治療と同様の眼圧下降効果が期待できるというエビデンスは知る限り存在しない。
初回治療としてSLTを行った場合の有効性には、エビデンスがある。
3.手術治療への切り替えを考える。
最近低侵襲な手術治療(MIGS)や新しい濾過手術(プリザーフロマイクロシャント手術)、特に後者は、MIGSよりも点眼薬を減らせるので、重篤なOSDの患者さんには、今後有効な選択肢と考えられる。
これを読んで私の感想としては、多くの患者さんは重篤なOSDになることは無く、また点眼薬でコントロールがつきやすいので、その場合は視野の状態を監視しつつ、点眼薬を増減しますが、OSDについても注意深くチェックしていくこと。
また初回治療でいきなりSLTを選択することはまずないことを考えると、難治のOSDが出現してきた場合、手術治療を考慮に入れ、なるべく早めに緑内障専門医にセカンドオピニオンを求めることが大切なのではないかと考えます。