2025年現在の日本における平均寿命は、男性79.78歳 女性87.52歳と長寿化しており、人生100年時代というのも大げさではない時代に、差し掛かっています。
緑内障は長期間の治療が必要な疾患ですから、今後も緑内障治療中の患者さんは増加することになりますが、その際以前と違う観点で治療を勧める必要を、緑内障専門医は提言されるようになってきました。
その中でも緑内障治療薬による副作用との関連について、今日はお伝えしたいと思います。
緑内障治療は、手術治療も随分進歩していますが、まずベースになるのは点眼薬治療です。
緑内障治療薬は、進歩を遂げ、点眼回数は1回ないし2回でよいのが主流ですし、合剤化も進み、1本で2成分含有している薬も多くあり、点眼本数も2本ないし3本までで何とかコントロールをつけようと臨床医は努力します。
本数が増えると、どうしてもドロップアウトする患者さんも増えますし、副作用や医療費も高くなるからです。
治療薬の副作用としては、まぶたに薬液がついたままになると、色素沈着が起きたり、睫毛が伸びること。
さらに、眼球を保護するために、まぶたの奥には脂肪組織がありますが、その脂肪が減るために、上まぶたが眼球に張り付いたようになったり(上眼瞼溝深化) 瞼の皮膚が奥まった形になり奥目のように見えたり(眼瞼皮膚の退縮)することがあります。
整容的な問題だけであるならまだしも、その状態(PAP)は、将来受ける可能性のある手術成績にも影響するという見識が伝えられています。
ですから、以前はともかく眼圧コントロールだけを考えて手術を避けることが第一目標でしたが、手術成績もよくなってきた現在は、緑内障専門医に手術を依頼することが考慮に入ってきた場合は、むしろPAPを軽減するための治療薬の選択ということも考慮に入れる必要があります。
PAPがかなり進むと、眼瞼が眼球を圧迫して眼圧を上げる可能性や、眼圧の測定が不正確になる あるいは測定できない といった事態にも至ることすらあり、薬剤の選択は簡単ではありません。
私はある程度の時期に、手術を選択肢に入れて緑内障専門医への紹介を心がけていますが、実際のところ多くの患者さんは難色を示します。
手術という選択肢のみならず、専門医のセカンドオピニオンを頂くことは、患者さんにとっても有益だと信じていますが、そのうえでまだ手術の必要はない ということになれば、安心だと思います。
ただそれをきっかけに、治療が中断してしまう可能性を考えると、私自身にも迷いが生じます。
あくまで患者さんの同意を得たうえで、薬や手術の選択をしていくということが大切というのが、結論です。