高齢化社会については、散々耳にしますが、今回のブログの題目にしました超高齢社会と緑内障診療についての知見を、東京慈恵医大の眼科教授の中野 匡先生が、我々眼科医に向けて発行される日本眼科学会雑誌に総説として、投稿されていましたので、そこから抜粋して、ご紹介します。
かなりボリュームがありますので、今回は高齢の緑内障患者さんにおける検査について纏めてみます。
高齢者の定義については、よく知られていますが、65~74歳が前期高齢者 75歳以上が後期高齢者。
社会の高齢化の指標として、総人口における65歳以上の高齢者の割合を示す高齢化率があり、高齢化率が7%を超えると高齢化社会 14%を超えると高齢社会 20%を超えた社会を超高齢社会 と呼ぶ。
日本は2007年に高齢化率が21.5%に達して超高齢社会に入り、2022年には29.0%とさらに高齢化率は上昇している。
日本における中途失明者は減少傾向にありますが、緑内障による視覚障害の割合は増加しており、50歳以上の視覚障害原因の1位は緑内障。
実際緑内障治療中の患者さんは、このような話を聞くたびに、不安な気持ちに陥ることだと思います。ただし高齢化の進んでいる日本においては、高齢者緑内障の患者さんが最も留意するべき層であることはよりはっきりしてきています。
緑内障治療においては、眼圧を低下させることだけが、はっきりと因果関係が分かる治療です。
眼圧をどの程度下げる必要が有るのかは、残存視野 視力 眼圧の経過を見ながら決定する必要が有ります。
眼圧は変動がありますし、その目標値を決めるための検査としては、視野検査 OCT検査が重要です。
視野検査は、高齢者のみならず若い人にとっても、人気のない検査です。
検査の精密さを求めると、長時間かかる検査も必要なのはわかりますが、途中腰が痛くなったり、注意力が継続しなかったり、ともかく検査における信頼性が低下し、正確な評価が困難になる傾向があります。
そのため、グローバルスタンダードといわれるハンフリー検査において、現在でも短時間で行えるプログラムがありますが、さらに30%の短縮が可能となったプログラム 今までの通常検査とより中心の狭い範囲に特化したプログラムが組み合わさった新しいプログラムなどが実用化されてきていますが、その評価が安定してくることが期待されています。
以前は精密であることを重視して、短時間版を軽視する傾向がありましたが、私も精密検査を重視するあまり、かえって精度が落ちてしまったり、検査が嫌でドロップアウトしてしまう患者さんが出るよりは、ともかく治療を継続してほしいと思います。
また中野先生は、これまで同一機器 同一検査プログラムを可能な限り継続測定することが推奨されてきたが、高齢者緑内障においては、視野検査が苦手な患者さんが増加して継続受診の大きな妨げになったり、検査の信頼性に悩む症例が増えることを思い、負担の小さい検査プログラムへの変更を検討することも主治医の重要な役割と述べておられます。
私も、たとえ最低限の年2回の視野検査ができなくても、間隔があいたとしても、また御家族の都合で診察に頻繁にこれなくても、ともかく治療は続けてほしいと願っています。