この論文を投稿したのは、米国メリーランド大学のUruchi Mishra氏。2023年9月11日号の栄養学の雑誌に投稿されたそうです。
日本でも世界でも、牛乳はカルシウムが豊富で吸収されやすいので、骨折しないための対策には、乳糖不耐症の人でなければ、推奨するというのが常識といってもおかしくないと思います。
そこでこの研究グループは、乳製品の摂取と大腿骨近位部骨折の発生リスクを評価するため、用量反応メタ解析(1946年~2021年の英語論文のうち前向きコホート研究を解析)をした結果を報告しました。
つまり膨大な数のデータ解析を行った結果です。
・牛乳の摂取量は400g/日までは段階的に大腿骨近位部骨折を増大させる。
・牛乳摂取量が0g/日群に比べ、400g/日群で大腿骨近位部骨折のリスクが最も高かった。
・牛乳摂取量が400g/日を超えると用量リスクは低下したが、それでも0g/日群と比較して750g/日までは骨折リスクは増加した。
・牛乳摂取量のどの範囲においても、0g/日群より骨折リスクが優位に低いという結果は得られなかった。
・ヨーグルト摂取に関しては、ヨーグルト250g/日 当たりにつき、骨折リスクが15%低下する。
・チーズ摂取に関しては、43g/日当たり骨折リスクは19%低下する。
・小児に関しては、骨折を含めデータ量が不足しており、現在のところ評価できないとなっていました。
類似文献として、2014年10月号のBMJオンラインの論文があげられていました。
スウェーデンで行われた大規模コホート研究で、結論だけを書きますが、女性は牛乳摂取量が多い人ほど、全死亡率 心血管疾患 癌の発生が高率。
また骨折についても同様で、大腿骨頚部骨折のみならず全骨折においても高率。
男性においても同様の関連が見られたが、女性ほどリスクの増大は無かった。
チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品の摂取量では、毎日高摂取している女性は、低摂取者より死亡率や骨折率は低いことが観察された。
男性についてはリスクの低下は僅かかほとんど見られなかった。
この2報告を直接日本人に結び付けることは、人種や環境の違いを鑑みると早計だとは思います。
是非日本人を対象に同手法の解析を試みて頂きたいと希望します。
世界中で、牛乳は健康にとても良いということが常識だったと思いますが、牛乳はあまり好きではないという人は意外と多いように思います。
私もその一人ですが、ヨーグルトやチーズは結構好きなので、この結果には力づけられます。
多分その結果がどうあれ、牛乳好きの人は飲むことをやめないでしょうから、乳製品関連の生産者や企業のお邪魔はしないと思いますので、お願いしたいと思います。
でも基本は、やはり自分があまり好きではないものは、たとえ健康に良いと言われても無理はせず、特に食べるものや飲むものは、自分の体感的に合う合わないで判断する方がよいのかもしれません。科学的ではないですが。