昨今緑内障治療薬は、多種類の中から選択が可能で、合剤も豊富で選択の幅が広がっています。
合剤というのは、一本の治療薬の中に、作用機序の異なる薬剤が2種類含まれている薬です。
抗緑内障点眼薬には、1日1回でよい薬も多いですが、合剤になっている場合、その一回を忘れると2種類分の薬をもろとも忘れたことになることが難点ですが、1本になっていると、なんといっても点眼回数が減ることで煩わしさが減少すること 点眼薬に含まれる防腐剤等に対するアレルギーがでにくいこと 合剤の方が2本の点眼薬をさすよりコストが安い事 等利点が勝っており、合剤の処方が増えています。
所で、合剤として他の薬と合わせやすい性質の薬の代表に、βーブロッカーのチモプトール というのがあり、多くの合剤に含まれています。
ただこの薬は、喘息のある患者さん 徐脈や著しい心不全の患者さんには出すことは、不適当とされています。
単剤として使っていた昔より、合剤としての使用が多くなった現在は、上記の内科疾患がないかどうかを患者さんに尋ねる機会は増えています。
処方当初は大丈夫でも、年齢が上がるにつれ病気が増え、使えなくなることもあります。
昨日の患者さんも、長らくの点眼治療で、コントロールは悪くない方ですが、耳鼻科の先生より緑内障があるなら、このステロイド吸入は使ってもよいかどうかを聞かれている とお薬手帳を見せてくれました。
ステロイドを吸入するということは喘息が思い浮かぶわけですが、ご本人によりますと、喘息ではなく咳喘息だから大丈夫 とのことです。
でも咳喘息の治療法として、気管支拡張薬(β刺激薬)となっていますので、結局喘息治療と同じです。
咳喘息と喘息の違いを調べてみますと、結局決め手は2つで、症状にゼーゼー ヒューヒューという喘鳴というものがなく、ただ咳が出るだけということ 胸部の聴診で気管支狭窄音が聞こえないこと が咳喘息の診断となるようです。
といっても、咳喘息を放置していると、30~40%が喘息に移行する可能性があるとも書かれていますので、治療は大切で喘息治療と同様、ステロイド吸入が主体とのことです。1週間ほどで改善しても気道の炎症が残っているので、3か月位の治療が必要となっていました。
定期的に眼圧チェックをする患者さんにステロイド吸入しかも長期でない場合は、心配しなくても手立てがありますが、むしろ眼科で処方している抗緑内障点眼薬が喘息を悪化させるという可能性もあるので、そこを眼科医として心配します。
この患者さんには、薬の組み合わせを変更して、βーブロッカーを中止しました。
点眼薬は、薬局で手軽に買える清涼剤的な感覚の人もいるのですが、作用のはっきりある治療用点眼薬は全身や局所への副作用もあるので、内服薬同様決められた用法 用量を使い、この患者さんのように新たな病気が発症したら、ご報告いただきたいと思います。