昨年の9月に行われた緑内障学会のイブニングセミナーでの講演内容をMRさんが、持ってきてくれました。
その中で特に緑内障患者さんが高齢化するにつれ、どういった不都合が生じるのかを考察した内容は、皆さんにも関係があると思い、ご紹介したいと思います。
点眼薬は一般に内服薬と違い、残りの錠剤数を数えて管理することが困難なので、させているかどうか他者が確認することは難しい。
点眼薬を入れ忘れることの問題は根本的に大切なことなのですが、今回は入れる際の手技に関しての話題です。
患者さんが点眼する様子をビデオ撮影して点眼の成功率を調査した結果、最初の1滴で目の中にうまく入った割合は、平均38.5%。
50代 62% 60代 39% 70代 35% 80代 8% とのことです。
つまり年齢が上がるにつれうまく入らなくなるということです。
この調査は、年代ごとの人数がかなりバラバラで且つ母集団全体の人数そのものが少ないので、傾向を知るための参考程度と考えてよいと思います。
ただ確かに、年齢が上がるにつれ難しくなることは想像できます。
その理由として、高齢になるにつけ後弯症(背中が丸くなること)になる傾向があることがあげられています。
後弯症になると点眼時に上を向くのが困難になるからです。
また高齢者にかかわらず、点眼が困難になる原因として、視力が低下すること 視野障害特に下方の視野障害が進行することは点眼成功率を低下させる要因であることがわかっています。
そのための対策として、点眼の姿勢として、座った状態ではなく、仰臥位(寝た状態)でさすことが勧められています。
仰臥位でさした場合、60代以上では年齢による違いはほとんど解消し、80代でも59.1%の成功率だったと述べられています。(60代未満では84.6%)
点眼の仕方の説明が大切とのことですが、難聴 認知症 うつ病 等を伴っている場合は特に困難な状況になり、寄り添う姿勢が大切と締めくくられています。
実際問題として、もしその患者さんが一人暮らしの場合は、どうやってわかってもらったらよいのかは、本当に困難な問題だと私は感じます。
施設に入居したり、デイサービスに通所することにより、劇的に眼圧が下がった患者さんもおられます。
そういう施設での定時での点眼が、適切に行われているからでしょう。
でも緑内障治療における点眼薬の大切さは、時に患者さん自身が知らない 或いは忘れている場合もあり、入居を境に点眼をしなくなってしまうこともあり、寄り添うというのは言うほど簡単なことではないと、日々感じています。