人間ドックで異常を指摘されて眼科に精密検査で来院する方の中で、一番多いのは視神経乳頭陥凹拡大(緑内障疑い) その次は漠然とした視力低下 そして黄斑部異常。
視神経乳頭陥凹拡大や黄斑部異常が指摘されるのは、健診の際に眼底カメラで写真を撮ることが多く、写真判定で引っかかりやすいからです。
黄斑部異常の中で一番多いのは、今回の話題の黄斑上膜です。
黄斑前膜とも言われますが、以前はセロファン黄斑症とも言われていました。
黄斑部というのは、今ではすっかり有名になりましたが、網膜の中でもひときわ大切なところで、視力の源となるところです。
その黄斑部に、硝子体の成分が残ってしまっている状態を黄斑上膜と呼びますが、ほとんどが40~50代から始まる生理現象(つまり老化現象)によって起きる特発性です。
眼球の大きな嵩を占める硝子体が老化を始めると、網膜から離れていきますが、その際に、黄斑部に硝子体成分が残り、日月を経て厚みを増していきます。
稀に、網膜剥離やその術後 ブドウ膜炎後 等に発症することがあり、その場合は特発性よりは早く進行します。
特発性の場合は、進行は非常にゆっくりのことが多く、10年以上かかって厚みを増すことも多いです。
OCT検査をすることにより、患者さんご自身も視覚的に確認することができますが、ゆがみや大視症(物が大きく見える)がなければ、至急手術が必要ということもありません。
それでも定期受診が必要な理由は、物理的な膜がある以上、治療としては、点眼や眼鏡補正では不可能で、手術治療をするしかありませんが、あまりにも長期に放置していると、大切な黄斑部に、強いしわが寄ったり、浮腫や円孔をつくることがあるからです。
その場合はもちろん、自覚症状も強く出ているはずですから、自覚症状を改善するためにも、或いは悪化を防ぐためにも、硝子体手術が必要となります。
白内障も進んでいる場合は、白内障手術と同時に手術することもあります。