今更の感がありますが、よく聞かれます。
かなり進んだ状態で来院されていても、全く何も異常を感じないという方もおられますし、メガネをかけて視力は出ているものの、しょっちゅう度数変更をしているので、どこか悪いのではないかという心配で来院される方もいます。
健康雑誌などに書かれている①かすむ ②まぶしくなる ③ダブって見える
という表現だけでは、自分の感じている違和感とは違うように思うようです。
まず①かすむ という表現ですが、これは視力が下がるとイコールではありません。
かすみながらも視力検査をすると1.0が出る場合もあります。
少し込み入った説明ですが、光が一点に集まらない現象を収差と呼びます。
水晶体がその名のとおり、無色透明の水晶玉のようであれば、目に入った光は、ぴたっと一点に集中し、ピントが合います。
白内障が出てきて濁りがあると、その光がきれいに集まりにくくなり収差が増大します。
この収差をメガネなどでうまく修正できない状態になると、かすんだり、ぼやけたり、明暗差がわかりにくくなり、暗い場所では紺色や茶色の色合いの違いが分かりにくくなります。
②まぶしさについても、濁りがある部分を光が通過するとき、散乱が起き光が集中しないで散らばるために起こる現象です。
この散らばった光(散乱光)が網膜を刺激しまぶしさを感じさせるという説明をしますが、詳しいメカニズムはわかっていません。
白内障の分類を濁りの強い部分で大雑把に3分類すると、水晶体の真ん中が濁る核白内障 一番多い周りが濁る皮質白内障 後ろ側が濁る後嚢下白内障となります。
まぶしさを強く感じるのは、後嚢下白内障の状態で、屋外 逆光 夜間ライトの条件の時に多いです。
③ダブって見える も先程の収差で説明がつきます。
ダブりが出ることを複視と言い、一般に両眼で見ている時に多く出る症状です。
白内障の場合は片目で見ているのに、ダブルという点に特徴があります。
中心が濁る核白内障で出やすく、また近視化しやすいため、先程述べたしょっちゅうメガネを変えなくてはならないことにつながります。
眼科での視力検査でも、普段とかけ離れた度数を入れて1.0が出る場合もありますが、この度数でメガネを作ると、普段はとてもかけられないということになってしまいます。
ついでですが、皮質白内障の場合は、近視化より遠視化しやすいと言われています。
メガネの度数がダイナミックに変化している場合、白内障の進行を疑う必要があります。
白内障の症状について、外来で短時間に説明するのは難しいのですが、これで少しご自分の症状に合点がいけば、幸いです。