適齢期という考え方は、何かと薄れてきているかもしれません。
私達世代が結婚するころには、クリスマスケーキ説などを、厚かましくも年上の男性が本人の前で、もっともらしく説教していたことがありますが、今はそういう話をする人を見かけることも無くなりました。
ただ出産は人としての限界があるので、適齢期があることは自明の理です。
それでは、病気の中でも、手術適応のある悪性新生物や、網膜剥離 骨折などの外傷等々 見つけ次第手術をすることが普通の場合、いつ手術しようかと迷っている余地はほとんどありません。
それはある意味、ショックはあるものの、流れに任せるしかないのですから、自分で決断しなくてはならない苦悩はありません。
眼科の中で、一番手術件数の多い白内障は、そうはいきません。
別に手術をしなくても、昨日と変わらない今日が過ごせますし、明日も多分大丈夫。
若い時と比べれば、見えにくくなったけど、年をとれば仕方がない。
また患者さんもよく口にされる言葉に、もうお迎えが近いのだから、今更手術など面倒なことはしたくない。
でも寿命は自分で決められないから、例えば10年経って白内障が進んで今より見えにくくなったら、テレビも見えないし、楽しみが減りますよ。
と言うと、テレビなんて見たってなにも面白くないし、特に見たいものはないからいい。
といったことをよく言われます。それは私としても同感できるのです。
ただ、見えにくくなると、どうしても食べこぼしたり、トイレが汚れたり、服のシミやごみに気付けなかったり、身ぎれいに過ごす事が難しくなるし、そこから思い立って受ける白内障手術は、難手術になりやすい。
そういう難しい手術になっても、鄭先生はもちろん、大変だったとも言わず、黙々と着実に行ってくれますが、ご自分のために、何歳でということではなく、不自由になってきたら、いつでも相談して頂きたいと思っています。