慶応大学循環器内科助教(2018年時) 白川公亮先生は、食べ過ぎが糖尿病や心血管疾患を引き起こすメカニズムについて研究され多くの論文を書かれています。
わかりやすくまとめられている論文を見つけましたので、ご紹介します。
肥満であっても健康な人もいれば、生活習慣病を発症している人もいますが、さらにある種のガンや自己免疫疾患の危険因子にもなるということがあるそうです。
過食や運動不足で太り始めると、余分な脂は皮下脂肪にたまり、さらに収まりきらない脂は内臓の周りに内臓脂肪として蓄積されます。
その段階が長期化すると、代謝異常つまり糖尿病の類が発症し始めます。
内臓脂肪がたまるとなぜ、代謝異常が起こるのか。
ただ体重が増えるだけでなく、何らかの病気に発展する原因は、炎症を引き起こすからだということですが、脂肪と炎症というのはイメージとしてつながりにくいです。
普通炎症というと、発熱したり、痛みがある状態を想定しますが、内臓脂肪はそういうことは無く、静かに但し持続的に続き、免疫細胞特にTリンパ球を老化させます。
高齢化すると一般に、感染症が重症化しやすかったり、ワクチン効率が低下したり、ガンのリスクが増加するのも、老化したTリンパ球が原因です。
マウスの実験で、マウスに高カロリー食を与え太らせると、若いうちから、内臓脂肪の中でTリンパ球の老化が急速に進行することがわかり、さらにこの老化したTリンパ球からは、正常なTリンパ球からは分泌されない炎症を誘導する物質が、大量に分泌されることがわかったそうです。
これで話がつながったわけですが、肥満による内臓脂肪の増加は、Tリンパ球を老化させ、さらに慢性炎症の原因となり、糖尿病などの発症因子となるというわけです。
内臓脂肪蓄積型肥満は、免疫細胞(Tリンパ球)の老化を引き起こし、糖尿病等の罹患率を増加させるとともに、感染症に対する抵抗力の低下 ガンのリスクの増加にもなると結論付けられています。
私の印象では、糖尿病の患者さんは割と元気な人が多く、合併症さえなければ闊達な印象ですし、インシュリンが必要な糖尿病があった母も、若い時には肥満気味ではありましたが89歳という寿命を全うできました。
ただこういうエビデンスがあるのですから、ある程度太りすぎには注意した方がよさそうです。