一年に何回かプラケニル(ヒドロキシクロロキン硫酸塩製剤)の眼科合併症のスクリーニング依頼が近隣の病院の免疫内科から来ます。
最近その依頼がありましたので、この薬について考えてみたいと思います。
このプラケニル錠は、世界中でSLE(全身性エリテマトーデス)或いは皮膚のみの皮膚エリテマトーデス(CLE)に対する治療薬として、認可されています。
この薬剤の、抗炎症作用 免疫調整作用が認められてのことですが、かつてクロロキン網膜症として社会問題となったことがあり、眼科における合併症に対する精査はとても重要な任務として、認識しています。
クロロキンという薬剤は、ドイツで、マラリアの治療薬として、1930年代に開発されたものの毒性が強いため、開発中止となりましたが、1943年アメリカでマラリアの特効薬として、短期間の投与に限り、使用開始されました。
日本でも1955年に、マラリアの治療薬として承認されたのち、適応疾患が拡大し、1960年代に慢性腎炎の治療薬として、医療機関のみならず、一般の薬局等でも販売されたため、クロロキン網膜症が多数発症したことが社会問題化したのです。
今では信じられませんが、1979年の薬事法改正までは、医療用の薬品と一般用の薬品についての法的規制が強化されていなかったようです。
結局クロロキンは、慢性腎炎への有効性は否定されました。
当初クロロキンは、マラリアの治療薬として短期間の服用として開発されたことを踏まえ、長期にわたる服用については、特に副作用にたいする厳重な管理が必要であることは周知されています。
検査項目は、依頼書に具体的に列挙されており、それを忠実に守って検査していきます。
視力検査 細隙灯検査 眼圧 眼底検査 色覚検査 スペクトラルドメインOCT検査 視野検査
黄斑部に特徴的な病変が現れるということを大昔に習いましたが、そうなってしまってからでは進行を止めることは困難なため、少しでも早く発見するための検査なのだということを、このラインナップを見て感じます。
責任ある仕事だと、身の引き締まる思いです。