さて今回は網膜静脈閉塞症という疾患について解説します。この疾患は網膜にある静脈に血栓ができることにより、血流障害が生じるものですが、より太い静脈に起こる「網膜中心静脈閉塞症」と細い静脈に起こる「網膜静脈分枝閉塞症」とがあります。前者がより重症ですが、後者であっても視力がかなり低下するケースもあります。
若い人に起こることは稀で、一般的には高齢者に多く、脂質異常症や動脈硬化などがリスクとなり発症します。失明することはまずありませんが、軽症なものから重症なものまで実に様々です。
まず軽症な場合ですが、全くの無症状のこともあります。特に網膜静脈分枝閉塞症では閉塞する血管部位が視力に直結する黄斑部付近に起こる程、一般的に視力が低下しやすい傾向があります。また場合によりますが、しばしば血流が悪くなると網膜にむくみが生じてしまい、これが視力低下に大きく関与します。これが視力に関わる黄斑部に起こるものは黄斑浮腫と呼ばれます。
また血流障害が広範囲に起こった場合、その程度が重症になると、これを補おうとして新生血管という異常な血管が生じて、そこから硝子体出血を引き起こすことで急激に悪化する場合もあります。
次回からは治療についてお話します。