さて今回は目の救急シリーズの第3回目、外傷を除いた緊急度の高い病気について解説します。
一つ目は「網膜動脈閉塞症」です。これは網膜に栄養や酸素を与えている動脈に血栓ができて動脈が詰まってしまう病気です。高血圧や高脂血症、不整脈などがある人に起こりやすい傾向があります。症状は視界の一部分あるいは全てがほぼ真っ暗になってしまい、重症な場合には完全に失明してしまうこともある病気です。例えるならば心臓の血管が詰まる、いわゆる心臓発作、心筋梗塞が目に起こったようなものです。心臓発作は発見が遅れると命に関わる病気ですが、この網膜動脈閉塞症も一旦発症してしまうと数時間で網膜の細胞が死んでしまうため、なかなか治療が困難と言わざるを得ません。発症してから数時間以内の場合、血栓溶解療法と言って抗血栓薬を点滴するなどの治療を行うこともありますが、その治療を行ったとしても回復困難なケースが多いのが現状です。
また「動眼神経麻痺」も緊急度の高い病気になります。これは脳から目に繋がる神経の一つである動眼神経が何らかの原因によって麻痺してしまう病気です。そしてその原因のうち怖いものが、脳動脈瘤といって脳の血管にこぶができ、それが神経を圧迫して動眼神経麻痺が起こった場合です。症状としては突然に物が二重に見えたり、まぶた(眼瞼)が急に下がる眼瞼下垂も起こったりします。脳動脈瘤の圧迫によって起こった場合には、動脈瘤が破裂する危険性が高いため、すぐに脳外科受診してもらう必要が出てきます。
私が以前勤めていた病院で聞いた話ですが、眼科受診で動眼神経麻痺を疑い、そこから救急車で脳外科病院に搬送したものの、その搬送中に脳動脈瘤が破裂したケースがあったそうです。ですのでこのように急に物が二重に見えたり、特に突然、まぶたが下がる眼瞼下垂が生じた場合にはすぐに救急受診することをお勧めします。
以上、色々な緊急疾患について解説してきました。皆さまの参考になれば幸いです。