以前にもふれた話題ですが、白内障手術のベストタイミングは?ということを考えてみたいと思います。
先日81歳の男性でかなり背中の曲がった、いわゆる亀背の患者さんの白内障手術がつつがなく終わり、両眼 矯正視力1.2と素晴らしい視力を取り戻すことができました。
この方は亀背以外はとても明るく明晰な方で、甥御さんが甲斐甲斐しくお世話をされていましたが、来院の目的は、糖尿病の眼科的な合併症がでていないかを調べる眼底検査のためで白内障の手術を希望して来られたわけではなかったのです。
かなり視力低下がありましたので、恐らくご不自由だったとは思いますが、手術のことは半ば諦めておられるように、私には見えました。白内障手術が必要なほど視力が低下していることを伝えますと、御本人は遠慮がちでしたが、むしろ甥御さんは、バックアップするので、是非検討して欲しいという御希望がありました。
亀背の方は、おしなべて仰向けに寝ることは困難で、側臥位で休んでおられますが、この方もそうでした。全身麻酔下では、意外と身体が伸びて仰臥位で手術ができるようですが、眼科しかも日帰り手術ですから、勿論いつもどおり局所麻酔です。
まず手術室で予行演習として実際に、仰臥位になってみてもらうのですが、いきなりは無理でまずいつもの寝るときの態勢である側臥位になり、甥御さんにもご協力いただき、また看護師が、足元、腰、背中にバスタオルをかますなどして、約15分ぐらいで手術のポジションが完成です。
鄭先生は、丁寧なのに手術は迅速、かつ冷静沈着。この患者さんが体位さえ取れれば、手術は成功したのも同然です。鄭先生御自身にも確認していただけなので、安心です。
手術当日は、予行演習が功を奏し、1回目は7分ぐらい2回目は5分ぐらいでポジションが取れたようです。
ここからが、本題なのですが、もし患者さんがあと10年せめて5年早く手術を受けておられたら、亀背はここまで進んでおられなかったでしょうから、普通に全工程10分ぐらいで終了です。御本人も手術室で不自由な体勢で、目ではなく体 の痛みを覚えることなくスムーズに手術を受けれたのではないかと思います。
当院の鄭先生は、どのような難題にも立ち向かっていこうというファイトを持っておられますから、日帰り手術も可能でしたが、どちらかというと難症例を避けたいと考える術者が多いわけですから、自宅の近くで安心してまた、経済的に日帰り手術を受けたいという患者さんのご希望をかなえられないリスクが、増すことになります。
今回はご家族とのチームワークがとれ、ご本人もとてもしっかりされていた、という好条件に恵まれましたが、できましたら、色々な条件が悪くなる前に必要に応じ白内障手術を考えてもいいのではないかと思った出来事でした。