顔面神経麻痺は、比較的聞きなじみのある病気かも知れません。
30代から60代ぐらいの働き盛りの人に多く、突然顔の半分が動かなくなったり、飲み物を飲もうとすると口の端からこぼれたり、瞬きができなくなり目が乾いて痛くなったり、味覚が鈍る。
等多くの不具合が発症するため、患者さんは大変戸惑います。
顔面神経は、顔の表情を作る筋肉を動かす運動神経ですが、一部味覚をつかさどる味覚神経、 涙腺や唾液腺の分泌をつかさどる副交感神経も含まれるため、多彩な症状が出現します。
9割以上が、末梢性といって顔面神経だけの障害で、その60%はベル麻痺と呼ばれる原因不明の特発性顔面神経麻痺といわれていました。
しかし現在では、単純ヘルペスウイルス(HSV)が主たる原因であることが分かっています。
重症化しやすいもう一つのタイプの顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)の原因も、水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルスが原因ですから、外傷や手術後といった原因のはっきりしない顔面神経麻痺のほとんどは、ヘルペスウイルス感染症と考えられています。
耳鼻科領域での治療が主となることが多く、勤務医の時には眼科依頼があって、併診となることが多かったです。
急性期の治療は、ステロイド薬と抗ウイルス薬で、ステロイド薬は重症化を予防して、浮腫を軽減することを期待しての治療です。ですから発症後長期間経過した神経には、効果が捗々しくないことが多いです。
抗ウイルス薬もウイルスの増殖を抑える目的ですが、細菌に対する抗生剤のように、ウイルスを死滅することはできません。
そのためこれも、早期に使用することが大切といわれています。
眼科領域では、瞬きが減ることによる角膜炎 角膜潰瘍に対する治療と、後遺症として眼瞼下垂が残った場合の治療等があります。
発症して、半年~1年経っても麻痺が続き、後遺症が残るのは、15%位といわれています。
顔面神経麻痺の治療上大切な点は、発症してなるだけ早く(3日以内)、耳鼻咽喉科を受診する ということは知っていていただきたいと思います。