網膜色素変性症は、とても長い経過をたどる病気で、4000人から8000人に1人の頻度で発症するといわれています。
慢性疾患ですから、眼科に通院される頻度は少なくても長期間のお付き合いになることが多く、世間話がでることもあり、印象に残る患者さんが多い病気です。
網膜色素変性症は、網膜の視細胞やそれが密着している網膜色素上皮で働く遺伝子に、異常がおきることで発症する病気です。
遺伝子異常ですが、実際に遺伝がはっきりしている方は半分ぐらいで、残りの方はよくわからないことが多いようです。遺伝の形式も色々なタイプがまざっていることがわかっています。
症状は、暗い所で見にくい(夜盲)、視野が狭い(視野狭窄)、そしてだいぶ進んで、はじめて、視力の低下を自覚するようになります。
白内障や緑内障の合併頻度が高いですが、それらは治療によって改善しますから、通院は途中で断念せず続けていただきたいと思います。
すぐにお顔を思い浮かべることが出来る方が何名かおられます。
先週来られた患者さんは、足も不自由になり、車椅子で来院されましたが、「大分視力が下がってきましたが、痛む病気でなくて助かっています。」
と言われました。
自分がその歳で同じ境遇だったとしたら、私にそう言いきれる胆力があるか、自問自答した瞬間でした。