外来が始まり、懐かしい患者さんだったり、新しい患者さんとお会いできるのは、嬉しいことです。
患者さんは高齢化していますし、私も(実は赤ちゃんだって同じなのですが)日々高齢化する一方ですので、時に会話がかみ合わないこともあります。
先日は面白い会話がありました。
12月ぐらいから涙目と目やにで、目がだいぶ荒れているということですので、その対策の目薬がご希望だろうと私は思っていましたが、目がかすむので何とかしてほしいですわ という初診の方でした。
視力は とカルテを見ますと、だいぶ下がっています。
診察すると、白内障もだいぶ進んでいますが、それよりまず目やにとまぶたの荒れを治さない事には、手術を受けることができる状態ではありません。
ですからまず目薬をさして、それから目のかすみを治療しましょうということで納得されたと思ったのですが、今年になって、再来されたところ、さっぱりかすみは治っていません。
とやや不満そう。
そのことは前回説明したはずなのに、とは思いましたが、まず目薬をさして良くしてから治療する予定でしたね。 といいつつ診察すると、だいぶ目の荒れは良くなっています。
目薬がよく効いたみたいですね。 とお声がけすると、あれはもうすぐよくなったから大丈夫だけど、さっぱりかすみが良くなりませんのや とやや不満そうです。
それでは白内障の治療に進みましょうか というと、白内障で目がかすむのですか 白内障の治療というのはどんなことをしますのや と今までのリラックスムードとは別に緊張感が漂っています。
あれ、その話は前回したはずなのに と思いつつ白内障は水晶体が濁ってきて視力が下がったり、まぶしくなったりする割と有名な病気なのですよ。
メガネを作っても濁った上に掛けたのでは、かすんだままでよく見えませんよ。
だから気持ちよく見えるためには、手術を受けてもらうしかないのですよ。
と説明を繰り返すのですが、目に手術をするなんて恐ろしいですわ と繰り返しておられます。
自分が白内障になるなんてびっくりする ということを何回も言われますが、80歳を超えておられますので、白内障があることはびっくりすることでもないのですよ。
とお伝えするものの、自分でもちょっと白内障の説明としては、おかしいなと思ってきました。
目がかすむ病気としては、白内障は有名だと思っていたのですが、それは眼科医だからそうなのかもしれません。
白内障を知らない人がいると思ったことは無いので、そういう話になってしまったのでしょう。
静かに聞いている看護師さんは、なおおかしかったのではないかと思うのですが、ある程度の納得が得られたら、看護師さんにバトンタッチするので、続きの話ができるように、患者さんへの私の説明を院内を回遊しながらも必要に合わせて、留まって聞いています。
結局この患者さんは、かすみを取ってもらいたい ということで、手術を納得され、看護師さんと共に別の場所に移動していきましたが、普段よりはかなり長い間、多分2倍から3倍ぐらいかけて根気よくお話をしていました。
少し手間暇はかかりますが、機械的ではないこういう外来の進め方は、私は好きです。