眼科医にとって白内障という病気は、よくある病気で、治療としての手術は洗練され、人工水晶体の選択肢も広がり、視力低下の原因が白内障のみということであれば、むしろ良かったとさえ思う病気です。
ですが、もちろん患者さんの身になれば、他人との比較でご近所の方は、自分より年配なのにまだ手術を受けていないのに、自分は年齢的に早すぎるのではないか との気持ちを吐露される方もいます。
どうして白内障になるのか ということを聞かれることがありますが、以前は糖尿病の影響やアトピーなどでステロイドを多用していたこと 紫外線や放射線の影響といったことを話したりしていましたが、最近は高齢化の影響で白内障という病気自体が増加しているので、これは老化のためですよね と答える前から納得されている方も多いです。
だから余計に、年齢比較が気になるのかもしれません。
一般に、ごく軽い白内障も含めると、50代で40~50% 60代で60~80% 70代で84~97%
80代以上ではほぼ100%の有病率となると評価している統計もあります。
正直この統計というのは、参考程度にとどめておく方がいいと思います。
有病率が分かったところで、白内障が年齢とともに増加していくありふれた病気であることは分かりますが、それによって手術を回避する決定的な方法があるわけでは無いからです。
基本的にまじめな医師団はそのために、洗練された手術手技を研究し、学会で報告することで広く共有し、またその技術を支えるための精密な手術器械や人工水晶体を作ってくれる企業の努力もあり、全国津々浦々で安定した手術成績を残すことができる様になったのです。
活動的なベビーブーマー達も70代に達し、多焦点レンズを希望する人も散見されるようになってきました。
ですから、白内障手術を回避するというよりむしろ楽しみに待つという表現をする方もいるぐらいになってきていることは確かです。
視力低下や生活の不便さで手術を考えるというよりは、よりよい生活のためにという前向きな気持ちで臨まれる方が増えるにつれ、ますます手術成功へのプレッシャーは強くなるのです。
ですから、白内障手術をもはや屈折矯正手術と捉える施設もありますが、それもちょっと行き過ぎではないかという気がします。