前回に続いて多焦点眼内レンズのお話です。今回はもう少し細かな点について説明したいと思います。多焦点眼内レンズと一言に言っても色々な種類のものが各社から販売されており、そのそれぞれに特徴があります。二重焦点や三重焦点といってピントが最も合う距離が二ヶ所、三ヶ所とあるものや、連続的にピントが合うようなものありますが、それぞれに一長一短があります。いずれもすべての距離に完璧にピントが合って、なおかつ完璧にクリアーに見えるという訳ではございません。それには個人差もあるため、よくよく説明して相談しながらレンズをどれにするのか決めてゆく必要があります。またその人の見え方に対する要求度や期待度が高すぎる場合には、どうしても手術する側としては慎重にならざるを得ない場合もあります。
そもそも単焦点レンズではピントが最も合う距離は一定であり、それ以外の距離ではピントが甘くなる、いわゆる老眼の状態になってしまいます。このため見えにくい距離は眼鏡によって補う必要があります。ただし、人にもよりますが眼鏡がなくてもそれなりには見えるため、「眼鏡しなくても近くも遠くも見えます」なんていう人も時々います。
多焦点はというと単焦点よりピントが合う距離に幅があるので眼鏡がなくても生活できることが多いのですが、残念ながら100%眼鏡がいらないという訳ではございません。一日中ずっと眼鏡が必要ということは稀ですが、時々眼鏡をかけないと見えにくいような場合もあります。
また多焦点レンズの短所として、単焦点に比べると眼内レンズの表面で光が散乱しやすいという点が挙げられます。例えば夜中に運転していると対向車のヘッドライトがやたらと眩しく散乱して見えたり、にじんで見えたりするようなことが起こり得ます。さらに単焦点に比べると若干見え方が鮮明ではないと感じてしまうようなケースもあります。しかしながらこれらの欠点は最近新しく発売されている眼内レンズになると、かなり改良されてきています。
以上が多焦点レンズの簡単な特徴になりますが、目の状態や年齢などによっては単焦点の方が好ましいこともありますので、よく相談して納得してから手術を受けることをお勧めします。