本日は網膜剥離の手術について解説しようと思います。
網膜剥離の治療として広く行われている手術法には、大きく分けて2種類あります。一つは主に眼球の外側からアプローチして治す「網膜復位術」、もう一つは眼球の内側から治す「硝子体手術」です。本日はまず一つ目の「網膜復位術」について説明します。
この手術法はPart2で説明しました、若年の近視の人に起こる網膜剥離に対してよく行われている手術法で、「網膜復位術」「強膜バックリング手術」「強膜内陥術」などと呼ばれている方法です。以前説明しましたが、網膜剥離は網膜裂孔から水分が網膜の下に入り込んでゆき、徐々に網膜が剥がれる病気ですので、手術によって網膜裂孔から水が入らないよう、網膜をその土台にくっつける必要があります。まず主にシリコン素材でできた「バックル」と呼ばれるものを眼球の外側に押し当てて眼球を内側に凹ませます。バックルはちょうど網膜裂孔が存在する部分の外側にうまく押し当ててやると、網膜裂孔とその周囲の網膜はその土台とひっつくことになります。
これだけでも治る可能性はありますが、これだけですと網膜とその土台とが強く癒着しないので、「冷凍凝固」あるいは「光凝固」という方法によって強く癒着させます。すなわち網膜裂孔の周囲の網膜に炎症を引き起こさせるように、その部分の外側から冷凍凝固であればマイナス70度程度、光凝固であれば熱を加えてゆきます。そうすると凍傷あるいは火傷がそこに起こるため、手術後に炎症が生じて強く網膜が土台と接着してくれます。
また剥がれた網膜の下に溜まっている水分が多い場合、水分が邪魔して網膜と土台がうまく接着してくれない場合もあります。この場合、網膜の下の水分を除去する必要があります。眼球の外側から眼球の外壁にあたる「強膜」に小さい孔を作り、その孔から眼球の外側に水分を排出させます。
以上、「網膜復位術」について今回は詳しく説明しました。この手術法は今から約50年前から行われている古典的な手術法とも言えますが、現在もなお網膜剥離の治療には欠かせない方法です。次回はもう一つの手術法、「硝子体手術」について解説します。