仕事ができる人は、机の上が整頓されているというのが通り相場ですが、究極に整頓されているべき部屋というのが手術室です。
手術には通常助手がつき、術者とあうんの呼吸で、先読みして術者が希望する器具を手渡します。
術者が術野から目を離すことなく手にすることができたら、無駄な動きが減り、手術時間の短縮にもつながり、ひいては患者さんの安全度も上がります。
大きな病院と違う診療所の良いところの一つは、スタッフが固定化しているところともいえると思います。
手術室の備品の一つ一つ、どこに何があるかは、スタッフが把握しています。
手術が終わって戻ってきた器具も、当院のスタッフが丁寧に磨き、洗浄し、滅菌消毒にかけます。
ですから、眼科で扱う繊細な器具でも安心して、任せることができるのです。
今回は、硝子体手術終了後の器具を洗浄していたスタッフが、細かな器具が一つ不足していることを、発見しました。
幸い予想外のところから、2日ほど経って見つけることができましたが、当初手術についていた看護師が、自分が捨ててしまったかもしれないというので、業者に注文を入れたりしていました。
捨てるべきものと、消毒するべきものとの見極めはあまりに当然として、私が問題にしたいのは、手術が終わって手術室から洗浄室へ下げるときの器具の整理整頓です。
何も一直線に並べる必要はありませんが、手術中から不要になったものをとりよけていくと自ずと決まった並びになり、その時点で器具の不足に自分で気づくことができるかもしれないし、受け取る人も仕事がスムーズに進められます。それを気働きと呼びます。
決まりきったことを愚直に飽きもせずできることが、手術室ではまず最低限必要とされることです。
それができてさらに気働きが加味されると、思いがけない突発事項にも柔軟に対応できる、有能なスタッフに成長できるでしょう。
それはひいては、手術中の術者への気の利かせ方にも通じるし、外来での患者さんへの心の通わせ方にも通じることではないかと思うのです。