加齢黄斑変性症や糖尿病性黄斑症 眼底出血後の黄斑浮腫等の治療法として、抗VEGF剤の硝子体内注射という選択がかなり普及し、件数も増加しています。
その薬品の添付文書には、注射前後には、抗菌薬点眼を投与すること と記載されていました。
当院においても、それを遵守しています。
一方、全世界的に抗生剤使用の増加による耐性菌が問題となっており、WHOを始め日本政府も不適切な抗菌薬の使用を減らすように、呼びかけています。
眼科領域においても、抗生剤の使用を見直すべきであることは、各学会からも注意喚起されています。
硝子体内注射前後の抗生剤点眼については、専門学会である日本網膜硝子体学会が、この度正式に、
・注射前後における抗菌薬点眼は、感染性眼内炎を予防する効果は無い
抗菌薬の使用の有無で注射後の感染性眼内炎の発症頻度に有意差はみられなかった
等の海外のエビデンス報告が増加していること。
・現在日本における硝子体内注射後の感染性眼内炎の発症頻度は、0.01~0.16%と白内障手術後の眼内炎より少ない傾向にある
等より、下記のように推奨されました。
1. 注射前の適切な消毒 注射手順を守る。
2. 通常の患者(感染症のリスクが高くない患者)には注射前後の抗菌薬点眼を使用しなくてもよい。
1.を守っていれば、抗菌薬点眼は原則不要であり、耐性菌の問題から抗菌薬は使用しないことが推奨される。
と正式に公示されました。
これを受け、当院においても、注射前後の抗菌薬点眼は処方しない事 といたしました。
硝子体内注射は、複数回になることも多く、以前は抗菌薬の点眼があったのにと、心配になる方もおられるでしょうが、正式な文書が出るのを私達医師も待っていた状態でしたので、安心して治療を受けてください。
1.を守ることは当然ですが、当院では処置ベッドでの注射ではなく、手術室での注射をしていますので、より安全性が担保されているのではないかと考えています。